アジアで大ヒットした意外な日本製品とその理由

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規模の大小を問わず、多くの日系企業がさらなるビジネスチャンスを求めて海外へと打って出るようになった現代。国境を渡った日本の製品やサービスは膨大な数になりますが、そのなかには予想をはるかに超えて大ヒットを記録している人気商品も少なくありません。 日本企業の海外展開をサポートするサイト「TENKAI」がお届けするこのコラム。今回は、アジアへの輸出で大ヒットした意外な日本製品の事例をいくつかご紹介しながら、その背景にある成功の秘密を探っていきます。

事例1 “もの珍しさ”を逆手に取ったダイソー(マレーシア)

“百円ショップ”でおなじみのダイソーは2015年3月時点で26の国と地域に1400店舗を展開していますが、マレーシアの店舗にはどう考えても現地の人にとって使いみちがなさそうな商品がいくつも陳列されています。その代表例が使い捨てカイロ。年間平均気温が25℃を超えるマレーシアでは生活必需品にはなりえないように思いますが、これが意外にもよく売れています。「冷房が強いオフィスで使いたい」といったニーズもあるようですが、「よくわからないけど買ってみたくなった」という意見も多いそうです。

基本的にダイソーでは、日本と同じアイデア商品を海外でもアレンジなしでそのまま販売しており、取扱説明などの記載も多くは未翻訳のまま。ローカライズしないで売るという手法は一見リスキーに思えますが、ダイソーは商品の“もの珍しさ”を逆手に取ったプロモーションで成功しました。目的があってダイソーへ買い物に行くというわけではなく、どんなものが見つかるか楽しみにして行く──それが現地の人の共通した意見だそうです。

事例2 現地特有のニーズに対応したカシオ(インド)

数学発祥の地であり、近年では数学教育やIT分野での発展が著しいインドでは、カシオの「CHECK CALCURATOR MJ-120D」という電卓がよく売れているそうです。この電卓が特別に売れる理由、それは、名前の通り「CHECK(検算)」の機能が付いているからです。インドではレジスターが普及しておらず、多くの商店・飲食店では電卓を使って支払い確認や閉店後の売上チェックをしています。こうした作業時に検算機能があれば、入力した金額が次々に表示されるので計算違いによる損失を減らせるというわけです。

またこのモデルにはインド独特の桁表示機能があり、この点もまた愛用者が多い理由のひとつです。日本や欧米諸国では大きい数字を3桁ごとにカンマで区切りますが、インドでは最初の3桁でいったん区切り、それより上は2桁ずつカンマを入れるという特殊な表示法が一般的。カシオの電卓はこの“インド桁”に対応した数少ない海外製品で、前述の検算機能と合わせて現地では圧倒的なシェアを獲得しています。現地事情を徹底的にリサーチしたマーケットインの戦略が功を奏した事例と言えそうです。

事例3 紙おむつが行き渡るきっかけをつくったユニ・チャーム(インドネシア)

GDPでは世界で第16位(2013年)という上位に位置しながら、1日2ドル未満で暮らす貧困層が人口の約半数にあたる1億人以上もいるインドネシア。著しい経済格差があるこの国では、富裕層に向けて質の高い日用品を打ち出しても国内でシェアが伸びず、大きな売上には結び付きにくいというジレンマがありました。そんな厳しいインドネシアの日用品市場で受け入れられたのが、ユニ・チャームの紙おむつです。

高分子吸収体の性能や容量はそのままに、外側だけ別の素材を使用するなどして相場(日本円で1枚40円程度)の半額ほどまで価格を落とすことに成功。これで、中低所得者層の家庭に日本の紙おむつが行き渡るきっかけができました。さらにユニ・チャームは、低所得の家庭でも気軽に紙おむつを使えるように個包装のラインナップを展開し、インドネシア人の紙おむつ普及率を30%から50%に引き上げたのです。多くのお母さんたちの負担を軽減したことは、当地での企業ブランディングにも一役買いました。

「正解」を見つけるためにすべきこと

海外進出に欠かせないと思われた「現地化」というプロセスを経ずに、アジアの国で成功を収めたダイソー。これに対して、カシオとユニ・チャームは徹底的なマーケティングによって売れる商品をつくり出しました。これからアジア進出・アジア貿易を考えている日系企業にとってどちらのやり方が正解かはわかりませんが、まずは市場のニーズや自社の強みを最大化する打ち出し方をとことん追求することが、成功への第一歩となるでしょう。

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