日本発のファストフードがアジアで成功した理由

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かつて、ファストフードといえばマクドナルドやケンタッキーフライドチキンといったアメリカ発の店舗がほとんどでしたが、今日、海外では牛丼やたこ焼き、うどんといった日本のものが人気のファストフードとして挙げられるようになりました。とりわけ日本食人気が高い東南アジア諸国では、こうしたファストフードチェーンが店舗数を増やし、売上を伸ばしています。

海外展開に関するリアルな情報をお届けするこのコラム、今回は海外進出を実現したジャパンフードチェーンの事例と、その成功の要因についてお話ししたいと思います。

事例1 多彩なメニュー戦略で支持を得た吉野家(シンガポール)

アメリカやアジアなどに656店舗(2015年12月時点)を展開する吉野家が、シンガポールに1号店を出したのは1997年のこと。当時、「日本食といえば高級料理」というイメージが根強かった当地では、その敷居の高さから敬遠される向きも多かったとか。また多民族国家であるため、宗教上の理由から牛肉を売りにすること自体のハードルも高かったようです。

そこで吉野家は、メニューの見直しに手を付けました。ここで新たに加わったチキン丼やサーモン・フライ丼などが好評で吉野家への注目度が高まり、メインだった牛丼にもファンが広がっていきます。野菜をふんだんに取り入れたメニューは健康食品と認定され、ヘルシーブームと相まって幅広い世代から支持を獲得。開店から20年近く経った今では、牛丼の味で育った世代がファミリーを持ち、吉野家のコアなファンとなっています。

事例2 スープも麺も現地風に合わせた丸亀製麺(インドネシア)

日本ではすっかり全国区となった讃岐うどんチェーン「丸亀製麺」は、今や海外でも店舗を拡大中。2011年のワイキキ店(ハワイ)オープンから、その数を75まで増やしています。なかでも好調なのがインドネシアの店舗。インドネシアは国民の約9割がイスラム教徒で、豚肉やアルコールといった使えない食材・調味料が多いのが食品産業・外食産業の海外進出におけるネックとなっていましたが、丸亀製麺は現地の食文化に合わせてオリジナル商品をアレンジするという手を打ちました。

まず、豚を使用していたスープそのものを鶏ガラベースに変更。麺もインドネシア人の嗜好に合わせてよりのど越しを重視した細めのものに変えました。この組み合わせで人気を博したのが「鶏白湯うどん」です。定番の「かけ」や「釜揚げ」などのメニューについても、現地の人の味覚に合わせることでファンの獲得につなげました。前述の吉野家が新しい味で勝負しているのに対し、丸亀製麺がうどんそのものをローカライズしている点は、まさに好対照といえるでしょう。

事例3 和食の可能性を信じた築地銀だこ(香港・タイ・カンボジア)

たこを食べる文化がない海外ではまったく受け入れられないだろう──そんな先入観を覆したのが、「築地銀だこ」です。2004年に1号店を香港に出店、その後はタイ、シンガポール、カンボジアなどアジア諸国を中心に拡大を続けています。海外の反応は上々で、「ボールのようなかわいい食べ物」と女性の間でも話題になっているほど。冒頭のような懸念は、まったくの杞憂となっています。

長い間、「たこを食べるのは日本人、ギリシャ人、イタリア人、スペイン人だけ」と言われてきましたが、“Sushi文化”が全世界に根付いた今日では、たこもまたポピュラーな寿司ネタとしてよく知られた存在になっています。2013年11月には和食がユネスコの世界無形文化遺産に登録、これもたこ焼きの普及にとっては大きな追い風となりました。築地銀だこを運営するホットランドは、日本食や和食を取り巻くこうした潮流を見極めながら、じつにタイムリーに海外展開を仕掛けたといえるでしょう。

広がる日本発ファストフードの可能性

牛丼という共通の味を守りながら、現地の事情に沿ったメニューバリエーションで人気を博した吉野家。日本の伝統食であるうどんのレシピそのものを根底から見直した丸亀製麺。そして和食を取り巻くトレンドを見極め、タイムリーに海外進出を果たした築地銀だこ──。それぞれに海外展開の戦略は異なりますが、独自の創意工夫でASEAN諸国の舌をうならせた日本発のファストフードは、今後さらに評価を高めていくはずです。

「どの国で出店するか」「誰をターゲットにするか」さえ誤らなければ、これから海外展開を考えているみなさんも成功を収めることができるでしょう。免許が降りにくいことから東南アジアのなかには飲食店を出すのが難しい国もありますので、詳しくは海外展開の経験豊富なコンサルタントに相談してみると良いでしょう。

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