ミャンマーが海外進出で注目されている理由

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武力を背景にした数々の瀬戸際外交や政治家アウンサンスーチーさんの自宅軟禁などにより、世界中に軍事政権国家として知られてきたミャンマー。そのミャンマーが今、企業のアジア進出の候補先としてにわかに脚光を浴び始めています。

日本企業の海外展開を支援するサイト「TENKAI」がお届けするこのコラム、今回は急速な勢いで経済発展の道を突き進むミャンマーについてご紹介します。ミャンマー進出の可能性をお考えの経営者の方、事業部長の方はぜひ最後までお読みください。

ミャンマーの歴史と転換期

国名:ミャンマー連邦共和国(Republic of the Union of Myanmar)
面積:68万km2(日本の約1.8倍)
人口:5141万人(2014年)
首都:ネーピードー(人口93万人/2007年)
言語:ミャンマー語
主要産業:農業
名目GDP:553億ドル(2012-13年)
経済成長率:6.4%(2012-13年)
在留邦人数:1367人(2014年12月)

 

インドシナ半島の北西部に位置するミャンマーは、1948年から1989年までビルマ連邦と呼ばれていた多民族国家です。映画『ビルマの竪琴』や荘厳な仏教寺院をイメージされる方も多いかもしれません。そのビルマ時代は軍事政権が事実上の鎖国体制を敷いていたため、豊富な資源に恵まれながら“発展できない発展途上国”として、東南アジアの経済成長から取り残された存在でした。

そんなミャンマーが経済成長を遂げる最大の要因となったのは、軍事政権から民政への転換です。2011年に誕生したテイン・セイン政権は積極的な経済路線を打ち出し、インフラの整備や経済特区の採用などを実行。同政権の要請を受けた日本政府・日本企業も、最大都市ヤンゴンの郊外で上下水道や道路、次世代電力網などのインフラ整備を請け負いました。97年から加盟するASEANでは2014年に初めてサミット議長国を担当するなど、日に日に存在感を高めています。

ミャンマー進出のメリット

1 資源が豊富で土壌が豊か

天然ガス、鉱物、宝石(ルビーは世界の9割を産出)などの天然資源が豊富なので、そうした資源の獲得および加工に関するビジネスの拡大が見込めます。また、ミャンマーには稲作・畑作適した肥沃な土壌があり、農業における事業展開も期待できます。

2 恵まれた人的資源

推計3200万人の労働人口を有するミャンマーは、人的資源(労働力)にも恵まれています。ベトナムやタイ、フィリピンなどに比べれば「未開拓」で外資系企業の進出も圧倒的に少なく、労働意欲の高い若者が多いことから生産拠点として魅力的と言えます。

3 人件費の安さ

経済発展が始まったばかりの国なので、他の東南アジア諸国と比べても人件費が安く、中国の数分の1程度に抑えることも可能です。実際、コスト増の問題から中国にある工場のミャンマー移転を検討している企業も少なくありません。

4 税制面の優遇措置

外資系企業の誘致を進めるために、テイン・セイン政権は「外国投資法」「経済特区法」などを制定。所得税・商業税・関税などの面でさまざまな優遇措置を講じており、今後さらなる優遇範囲の拡張も期待されています。

5 ビジネスや生活がしやすい

国民のおよそ9割が仏教徒であるミャンマー人は「温厚」で「勤勉」と言われています。またかつてイギリスの統治下にあったことから英語でのコミュニケーションが比較的通じやすく、国民の識字率も90%以上。治安の良さも特長です。

6 地政学的なロケーションの良さ

ミャンマーはASEANのインド洋への玄関口として産業集積が期待される、地政学的に非常に重要な位置にある国です。2015年にはベトナムのダナンからインドシナ半島を東西に貫く「東西回廊」が全通し、今後さらに物流が発展すると目されています。

デメリットを上回る期待感

こうした点から、日本企業でもJFEエンジニアリング(製造)、ヤクルト(飲料)、レオパレス21(不動産)、フレッシュネスバーガー(飲食)などがミャンマー進出を果たしており、こうした企業はますます多くなると見られています。

もちろんメリットだけでなく、「スタッフのビジネス意識が低い」「制度が整っていない」「停電が多い」「ネット環境が不十分」「家賃や宿泊代などの不動産物価が異常に高い」といった問題もありますが、それでも、先物買いの対象としてミャンマー進出に大きな魅力を感じている企業が増えているのは間違いありません。

企業の海外進出・アジア進出には適切な準備と支援が必要です。リスクと隣り合わせの海外展開で失敗を避けるために、慎重に現地調査や戦略策定を行い、わからないことがあれば現地をよく知るコンサルタントのサポートを受けるようにしましょう。

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