韓国企業の海外進出に学ぶ、「マーケットイン」の考え方

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アメリカやヨーロッパ、中国、東南アジアなどの大都市を訪れた際、「LG」「サムスン」「ヒュンダイ」といった韓国企業の看板や広告の多さに驚いた方もいるかもしれません。最近ではこうしたエレクトロニクス系・自動車系の大手企業だけでなく、卸売業、小売業、金融業、飲食業といった分野でも韓国中小企業の海外進出・海外輸出が目立っています。

韓国は「海外ビジネスが上手な国」と言われます。では、日本企業と韓国企業の海外展開アプローチにはどのような違いがあるのでしょうか?日本企業の海外展開を支援するサイト「TENKAI」がリアルな情報をお届けする当コラム、今回は韓国企業に学ぶ海外進出の考え方についてお話をしていきたいと思います。

韓国が経済成長を遂げた経緯

国名:大韓民国(Republic of Korea)
面積:10万km2(日本の約4分の1倍)
人口:5000万人(2013年)
首都:ソウル(人口1044万人/2012年)
言語:韓国語
主要産業:電気・電子機器、自動車、石油化学、造船、鉄鋼
名目GDP:1兆4170億ドル(2014年)
経済成長率:3.32%(2014年)
在留邦人数:3万6708名(2014年10月)

 

韓国では1950年から1953年に起きた朝鮮戦争で国内のインフラが壊滅し、それによって経済が隣国に大きな遅れを取っていました。しかしその後、漢江の奇跡(ハンガンのきせき)と呼ばれる大きな経済成長を経験。2008年には名目GDPで世界15位に、2014年には世界13位にランクインするほどの経済大国となっています。

韓国の経済を成長へと導いたのは、積極的な海外進出です。韓国は日本よりも市場規模が小さく、「ものづくりの力」で日本の後塵を拝していたこともあって、早くからグローバル化を見据えたマーケティングに力を入れてきました。日本のメーカーなどを研究し、あえて日本とは違うアプローチで世界に打って出たのです。

「プロダクトアウト」と「マーケットイン」

日本と韓国の貿易活動・マーケティング活動の違いを表現する言葉に、「プロダクトアウト」「マーケットイン」というものがあります。プロダクトアウトとは、企業が商品の企画や生産をする上で、作り手側の強みや事情を優先させるスタンスのこと。それに対してマーケットインは、ニーズありき・顧客視点ありきで商品の企画や生産を行う、買い手側の考え方を優先させるスタンスのことです。

グローバル化した市場での課題

プロダクトアウトの原点にあるのは「作り手がいいと思うものを作って売る」「いいものを作れば売れる」という発想で、多くの日本企業はこの考え方を基本に事業の海外展開を進めてきました。しかし、商品の機能や技術力の高さだけではグローバル化した市場に十分に適応できず、均質化された商品はなかなか売れないという状況に――。

マーケットインへのシフトチェンジ

そういった流れで登場してきたのが、マーケットインというビジネススタイルです。例えば、階級社会が根付くインドでは「富裕層しか冷蔵庫を所有していない」という独自性をふまえて生産された鍵つき冷蔵庫が爆発的に売れました。日本企業では、食品会社が当地の食文化や定番料理に合った調味料を開発したり、自動車メーカーがセダンニーズの高い国でコンパクトカーのセダンタイプを製造したりして、シェアを広げています。

相手を知り、自らを追求する

韓国は、日本よりも早くからマーケットインの戦略で海外進出を成功させてきました。LEDバックライトを採用したフラットテレビを「従来とは一線を画す最新鋭デバイス」として打ち出し、世界的に多くのシェアを獲得したサムスンは、その代表例と言えます。現地での広告宣伝が巧みだったり、ボリュームゾーンへの切り込みが的確だったりするのは、ターゲットの特性を的確に把握できているから。言い換えれば、ここに十分な「時間」と「費用」をかけていることがその後の成功につながっていると考えられるのです。

プロダクトアウトにもマーケットインにもメリットとデメリットがあり、プロダクトアウトが古い考え方でマーケットインが完璧な考え方なのかと言えば、決してそうではありません。重要なのは、「相手(ニーズや顧客視点)を知り、自ら(会社の強みや商品の価値)を追求する」ということ。韓国のようにマーケットを的確に捉え、それをふまえて日本の技術力が活かされた商品を正しく打ち出せれば、おのずと事業は成功に近づくはずです。

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