日本企業の進出も多い東南アジアの安全度は?

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世界規模の債務危機や深刻な政情不安などによって特定の国や地域の経済・社会情勢が影響を受けると、現地に進出した企業が個別の事業相手(取引先など)が持つ商業リスクとは無関係のところで損失を被ることがあります。これがカントリーリスクと呼ばれるものです。カントリーリスクは今や、海外展開や直接投資を行ううえで考慮すべき必須事項になっています。

今回の「TENKAI」では、多くの日本企業が進出している東南アジア諸国のカントリーリスクについて、その現状と対処法を探っていきたいと思います。

カントリーリスクの具体例

海外展開においては、展開先の国の政治的混迷や経済の停滞、それにともなう社会状況の不安定化などによって、投資回収・代金回収が困難になったり、商品の価格が変動することで損失を被ったりするケースもあります。革命・紛争などの情勢不安、地震・洪水といった天変地異のほか、急激なインフレ価格の下落国債のデフォルト、政権交代による経済政策・法政策・税制の転換などがカントリーリスクとして考えられます。

かつては三井グループがイラン・イラク戦争(1980~1988年)における情勢悪化の実害を受けました。近いところでは、中国での反日デモに端を発する暴動やタイの工場を襲った大洪水、ギリシャ債務危機などが記憶に新しいかと思います。

アジア諸国でのリスク評価

では、多くの日本企業が進出する東南アジア諸国のリスク評価は現在、どうなっているのでしょうか。カントリーリスクは多くの民間格付会社によってレポートされていますが、それぞれ細目ごとに客観的で信用性の高いデータが用いられているため、格付会社ごとに評価が大きく分かれることはほとんどありません。今回は一例として、OECD加盟国からなる格付け機関「カントリーリスク専門家会合」の格付けをご紹介します。

なお、カントリーリスク専門家会合ではカントリーリスクをAからHの8段階で評価しており、下記のようなランキングになっています(2016年2月現在)。

C-RANK

アジアでトップとなったのは、日本と同等の評価を得た先進国のシンガポール。経済活動が活発で、比較的政情が安定している台湾香港がBランクでこれに続きます。世界第2位の経済力を背景に持つ中国は、マレーシアブルネイと並びCランク。そしてタイフィリピンインドネシアなどがこれに準ずるレベルと考えられています。カンボジアラオスミャンマーといった国々はランクが軒並み下位になっていますが、これは後発開発途上国はカントリーリスクが高いと考えられる傾向があるためです。

このランキングは、各国のGDPや国際収支、外貨準備高、対外債務などに加え、当該国の政情や経済政策といった定性的要素を加味して総合的に判断されたものです。したがって、政情面の問題の大きさや経済活動の好不調が必ずしも的確にランク付けされているとは限らないということを覚えておきましょう。

リスクには適切なリスクマネジメントを

上記のランキングを見ると、「ベトナムは危ないじゃないか」「ミャンマーに海外展開して大丈夫なのか」などと思われるかもしれません。が、実際に進出している日本企業はたくさんありますし、起こり得るリスクを調査し、適切なリスクマネジメントを行うことで海外展開は成功させやすくなります

例えば、為替変動のリスクが大きそうなら為替予約という方法があります。貿易取引における資金回収の部分で不安があるなら、貿易保険の活用も有効でしょう。輸出先の経営破綻やテロなどに備える保険もあるので、海外進出計画を立てるにあたって最適なものを探してみてはいかがでしょうか。

地震や火山活動、洪水などの天災に遭うリスクを減らしたいなら、地域ごとの過去の統計をチェックすべきです。東南アジアの場合はインフラやアクセスの良し悪しがエリアによって大きく変わるので、開発が進んでいる地域特区を選びましょう。税制など法令の急な変更に対応するには、適切な情報収集・管理体制が不可欠。その方面に知見がある現地スタッフと信頼関係を構築しておくことが、不利益を被らないためには必要です。

カントリーリスクとの正しい向き合い方

カントリーリスクと向き合ううえで最も重要なのは、進出候補国の情報をアップデートし、どのようなリスク要因があるのかを常に把握しておくことです。ただし、カントリーリスクは政情や経済面だけでなく社会情勢などにも左右され、範囲も知的財産権の侵害から技術ノウハウの流出まで多岐に渡るため、一企業が独自に調査を行うのは非現実的と言えるかもしれません。特に、海外事業部を持たない会社やモノづくり特化型の中小企業ならなおさらです。

そんなときは、日本企業の海外展開に明るいコンサルティング会社の相談窓口を活用しましょう。もしかしたら、さまざまなカントリーリスクを考慮して「進出形態を拠点販売から輸出に切り替える」といった新たな選択肢が見つかるかもしれません。これまで数多くの日本企業の海外進出・アジア進出をお手伝いしてきた「TENKAI」では、現地での販路開拓を含めた輸出支援も行っています。各国の拠点・パートナーを通して一貫した海外展開支援が可能ですので、お気軽にご相談ください。

 

 

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