華僑に学ぶ海外展開ビジネスの極意

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海外で成功している人々と聞いて、華僑を思い浮かべる方は少なくないでしょう。彼らは今や世界で5500万人もいると言われており、アジアはもちろん、欧米や日本でもコミュニティを形成している一大民族集団です。その影響力は政治・経済など各方面に及び、ビジネスの世界でも大きな勢力を占めています。

日本企業の海外展開を支援するサイト「TENKAI」がお届けしているこのコラム、今回は、華僑に学ぶビジネスの心得と題して、世界を志向する日本のビジネスパーソンが彼らから学ぶべきポイントをご紹介していきます。

仕事・金・人脈に対する徹底した合理主義

華僑は中国本土から海外へ移住した中国人およびその子孫のことで、狭義では中国籍を持ちながら海外(中国・台湾・香港・マカオ以外)で暮らす漢民族のことを指します。コミュニティの多くはアジアにあり、インドネシアやタイ、マレーシアといった国々で生活をしている華僑は600万人以上。現地における影響力は大きく、インドネシアでは人口の約5%に過ぎない彼らが経済の90%を支配していると言われています。

ではなぜ、華僑が各国の経済を牛耳ることができたのでしょうか。その秘密は、仕事やお金、人脈に対して徹底的な合理主義を貫く彼らのビジネス哲学にあります。

「餅は餅屋」に徹したスピード重視のビジネス

日本には「餅は餅屋」という言葉がありますが、それを突き詰めているのが華僑です。たとえば、起業にあたって彼らは「アイデアを出す人」「お金を出す人」「任務を実行する人」と役割分担することで、実にスピーディーに事業を立ち上げます。社長が何から何まで自分でやろうとして中途半端に終わりがちな日本の風土とは、ここが違うところ。大切なのは、自分ができないことはできる人にやってもらうという良い意味での割り切りです。

迷ったら、手もお金も出さない

日常の買い物で「どの製品にしよう?」と迷うことはよくありますが、そんな時、華僑の人たちは「迷ったら買わない」を貫きます。なぜなら、彼らにとってそもそも迷う時間がもったいないからです。華僑という人々は時間を何より大切に考えます。だからこそ、上述したようにビジネスもスピード重視。もちろん、商売への出資話でも少しでも迷うことがあれば決してお金は出さない。その合理的発想を、日本人は見習うべきかもしれません。

頑張ることより、ヒマでいることが重要

朝から晩まで働くことは日本人では美徳とされますが、華僑は違います。彼らの信条は「つねにヒマでいる」こと。なぜなら、そうでないといい儲け話があってもすぐに対応できないからです。1日働き詰めだったら大切な電話にも出られず、投資すべきかどうかを正しく判断する余裕もありません。しかし、彼らの「ヒマ」は決して遊び呆けるための時間ではなく、有用な情報に対してつねに臨戦態勢を整えておく時間にほかなりません。

時間が惜しいからこそ、人脈に優先順位を付ける

儲け話はいつ飛び込んでくるかわかりませんが、かといって24時間臨戦態勢でいることは不可能です。だからこそ、電話に「出る」「出ない」の判断が重要になってきます。そこで華僑が心がけているのが、人脈に優先順位を付けること。自分のビジネスにとってキーパーソンをリストアップし、その人物を中心に仕事を回していくという手法です。それゆえ、決められた時間にはその人物から来た電話しか受けないその人物からの仕事しかしない、といった約束ごとを自らに課すのです。

独自の人心操縦で有利に事を進めるスキル

ある会社に対して仕事を急がせたいとき、私たちは「もう少し前倒しでお願いします」とか「少し急いでいただけますか?」と打診します。しかし華僑は、同業他社を引き合いに出して「今回は御社にお願いしていますが、じつは別の◯◯◯社さんともお付き合いがありましてね」といった話術で巧妙にプレッシャーを与えます。「遅い」「急いでくれ」とはいっさい口にしないのですが、こう言われた会社は仕事を急がなければならない気持ちになります。これは金額の交渉でも同様。まさに世界有数の営業マンたる所以(ゆえん)です。

彼らの処世術に学ぶ

仕事、お金、人脈。すべての価値を経済的合理性で測る華僑の考え方にはなかなか「ついていけない」という日本人の方もいるでしょう。しかし、故郷から離れ、異国の地で生き抜くために彼らが長い年月を経て身に付けてきた処世術は、どれも理にかなったものばかり。悪く言えば温室のような島国で安穏と暮らしてきた私たちも、シビアな海外ビジネス・海外貿易へ打って出るからには、彼らの知恵に多くを学ぶべきかもしれません。

納期の遅延、品質の低下、それにともなう責任転嫁……。海外に行くと、日本では当たり前だったことが当たり前ではなくなります。完全に信用できる相手でなければ納期を信用してはいけませんし、「見栄の文化」があるアジア諸国では人前でスタッフを怒るのは厳禁です。「郷に入りては郷に従え」という言葉がありますが、約束ひとつ、怒り方ひとつとっても、現地を理解してできるだけ現地に合わせることが成功の秘訣と言えるでしょう。

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