日本企業が海外進出を検討すべき理由

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

海外進出をしている日系企業数(拠点数)は、平成25年10月1日時点で約64000(外務省調べ)。商品やブランドなどの海外展開を視野に入れている企業は年々増加傾向にありますが、実際に具体的なプランを策定し、それを実行できている企業はあまり多くありません。

その理由はいくつか考えられますが、もっとも大きいのは「本当に本質的な部分で海外進出のメリットを理解できていないこと」ではないでしょうか?何となく「コストを抑えたい」「競合に追随したい」と思っているだけでは、忙しい業務の合間に準備を緻密に進めることなどできません。

日本企業の海外展開支援サイト「TENKAI」が海外進出に関する濃厚でリアルな情報をお届けする当コラム、記念すべき第1回目は「日本企業が海外進出を検討すべき理由」についてお話ししたいと思います。

海外進出のメリットと注意点

その1 コストを抑えられる

海外進出の目的でもっとも多いのが生産コストの削減です。日本やシンガポールなどの一部の国を除くアジア諸国では物価に大きな差があるため、生産拠点をアジアに移すだけで製造原価を大きく圧縮することができます。コスト削減という点でとくにフォーカスされるのは土地代や建設費などの初期投資と人件費ですが、それ以外にも資材や設備の調達コスト、流通コスト、プロモーションコストなども大幅な削減が期待できます。

「コスト削減」に関する注意点
東南アジア諸国の物価は日本などに比べればまだまだ安いですが、タイのバンコク、インドネシアのジャカルタ、ベトナムのホーチミンなど、目覚ましい経済発展を遂げている地域では思ったほど物価が安くないエリアもあります。特に都市部に拠点を設けたい場合はシミュレーションを行い、コスト削減の見通しを立てるようにしましょう。オフィス代や人件費が日本とさして変わらないようでは、海外展開をする意味がありません。

 

その2 マーケットが大きい

世界3位の経済大国と言われる日本の市場ですが、これから徐々に人口が減少していくことがわかっており、GDPの大幅な上昇も期待できないため “先細り”のリスクがあります。それに対し、13億人規模の中国市場や12億人規模のインド市場、6億人を超える経済圏となったASEANといった将来性がある地域に打って出れば、安定した収益を生み出すことができます。2012年8月期に前年比63.4%の売上高を記録(同時期の国内売上高は3.3%増)したユニクロが好例です。

「マーケット拡大」に関する注意点
よく日本人だけで事業を動かすチームを固めてしまう企業がありますが、「人と人とのつながり」がビジネスに大きく関わってくる東南アジア圏ではそれが失敗につながることがあります。海外展開で重要なのは、現地で信頼できるパートナー(企業もしくは個人事業主)を見つけること。ファミリー同然の付き合いができるパートナーと出会えれば、マーケットのことから法令に関することまで幅広くフォローしてくれるでしょう。

 

その3 付加価値を付けやすい

商品やサービスの価値を決めるポイントの一つが「差別化」です。東南アジアの若者に「現地製よりも高いが質は良く、日本製よりも安くて求めやすかった韓国製の化粧品」が刺さったように、自国ではありふれたものでも商圏が変わればオンリーワンの商品やこれまでになかったサービスになる可能性があり、そうなればそこにお金を払う価値やメリットが生まれます。企業名やブランドの認知も広がり、長期的に見ればノウハウや人材も集まりやすくなるでしょう。

「付加価値」に関する注意点
付加価値がなく差別化できない状態を「コモディティ化」と言い、コモディティ化すると価格競争に巻き込まれやすくなります。ある商品やサービスがまだ根付いていない地域、ボリュームゾーンができあがっていないジャンルで勝負するというのは一つの手ですが、マーケットを間違えると後発の企業との間で価格競争になるデメリットも。常に市場の情勢を把握し、自社ブランドを差別化できるポイントを明確にしておきましょう。

 

「具体的に」が成功への第一歩です

海外展開・アジア展開にメリットとデメリットがあるのは当たり前です。重要なのは、そうしたメリットとデメリットを明確に理解したうえで、できるだけリスクを減らす方法を選ぶこと。そうすれば、理論上は貴社の海外進出が成功する確率は高くなります。

これから日本の人口が減少し、中国、インド、東南アジア諸国の生産力・購買力が高まってくるのは間違いない事実。手をこまねいているくらいなら、早期進出のメリットを受けられるうちに決断したほうが良いでしょう。「ぼんやり」ではなく「具体的に」考えることが、海外進出を成功させる第一歩です。